狼くん、ふれるなキケン!



きゅうに腰を屈めて顔をのぞきこんできたまやくん。


驚いてのけぞると、まやくんは呆れた目でこっちを見ていた。




「なにぼーっとしてんのー」

「ちょっと考えごとしてたんです……っ」




このタイミングで? ってまやくん、怪訝な顔。




「てかさー、やっぱ気づかないとかある? って思うんだけど」

「……?」

「それ」





まやくんが目線だけで指したのは、例の痕。

まだその話続いてたんだ。




「それだけ男に慣れてなかったら、そんなとこにちゅーされたらさすがのひなちゃんでも気づくでしょ、ふつー。心当たりないの?」

「だから、ないですってば」

「ほんとうに?」




まやくんは疑るような目で見てくるけれど、ほんとうにほんとうにそうなのだから、そんな目されたって困る。



この街に戻ってきてからというもの、まともに関わった男の子なんて狼くんとまやくんのふたり。


まやくんは除外するとしよう。
それなら同じ家で暮らしている狼くんが最も可能性が高い、けれど……。


同時に、狼くんは最も可能性がない。

だって、あの狼くんだよ?





ふれることはおろか、同じ部屋にいることもいやがる狼くんが私に……まやくんが言うような痕を残すわけがないもん。


“牽制” って要するに、「俺のもの」ってことでしょ?



そんなの、ぜったいに、ないって断言できる。