「そういえば!」
ばっ、と勢いよく狼くんを見上げる。
そのとつぜんの私の動作に、狼くんはぎゅっと眉をひそめた。
そんな顔しないでほしい。
ちょっと狼くんに聞きたいことを思いだしただけなのに。
「あのですね、狼くん」
「……」
「つかぬことをお伺いするんですが、昨日の夜、もしかして……私のこと、部屋まで運んでくれたり、しました……?」
おずおずと尋ねる。
聞いておきながら、自信はそんなにない。
だけど。
「昨日、すっごく眠たくって……。お風呂にあがって、ソファに座ったところまではなんとなく覚えているんですけど」
そこからの記憶がまったく残っていないの。
だから、寝オチしちゃったのかな……と思ったのだけど、びっくりした、目覚めたらちゃんと自分の部屋のベッドの上だったから。
もしかして、狼くんが……? と、これはちょっと期待も込みで思っている。
「……。運んでないけど」