狼くん、ふれるなキケン!





「我が家だと思って自由に使ってくれていいからね〜」



親切にも、そう言ってくれた狼くんママ。


それから、「ひなちゃん用に」って明け渡してくれたのは、もともと桜くんが使っていた部屋だった。


ベッドひとつ、勉強机ひとつ。

桜くんがかつて使っていた家具たちがしっかりと揃っていて、居候にはもったいないくらい。



桜くん、お借りしますね、とアメリカの方向にむかって一応心のなかで唱えておく。



────アメリカ、ってここからどっちの方角にあるのかわからないけれど。その辺はてきとうに。こういうのは心構えが大事なの。




荷物の類が入っている段ボールも、すでに部屋に運びこんでくれていた。

ガムテープをびりびり剥がして、とりあえず近いうちに入用になりそうなものから取り出して整理していく。




「……!」




その中でも、箱から取りだしたとき、思わず目がキランと輝いたのは。


パリッとした新品のシャツ、プリーツのスカートに、胸のところに校章が入ったカーディガン、それからリボン。



そう、制服。