そう、きゅうに、今思い出した。
『ろうくん、ピーマン食べれないの?』
『だって、にがい……』
お弁当に入っていたピーマンと、泣きそうな顔をしてにらめっこしていたちびっこ狼くん。
狼くんは、自分の思っていることを無理にはっきりと主張したりするような性格ではなかったけれど、ピーマンだけはいつもかたくなに拒絶していた。
それほど苦手だったんだ。
『じゃあ、ひなが食べてあげる!』
『……ひぃちゃんが? ほ、ほんとう?』
『うん! ひなは強いからピーマンなんてへっちゃらだもん!』
狼くんのにがてなピーマンは、私が代わりに食べて、そんな私を『ひぃちゃん、すごいね』ってまるでヒーローかのように、きらきらした瞳で見つめてくれるから、嬉しくて。
狼くんの前で、ピーマンを食べては得意げにふふん、と胸を張っていたような気がする。
「べつに」
目の前の、あの頃よりいい意味でも……そして、わるい意味でもずいぶん成長した狼くんは、素っ気なく言う。
「食えるし、これくらい」



