11月上旬。

朝の8時ごろ、いつもと変わらない街並み。
紅葉が散り始める時期、登校のために歩き慣れた道を真っ直ぐに進む。
後ろから猛スピードで走って来る人がいることにまだ気付かない。

ドンッ

「ゔっ」
「おはよー!」
「朝からぶつかって来るなよ。もう少し穏やかに声をかけてくれ」


朝から元気に突進して来るのは中学からの女友達の野崎梨亜だ。

「だって灯里が色んな人にモテるのが許せないもん」
「なんだよそれ」

灯里は気付いていないが歩いているだけで注目を浴びている。
ただ、それは動かず喋らなければの話なのだが。
双子が事故に遭ってから、周りは灯里の性格が変わったと言う。
その事を実感しているのは灯里本人であった。
事故に遭ったあと、灯里にはもう一つの人格が生まれた。
それが兄であった海里のものだ。

「ねぇ灯里」
「何だよ」