屋上は11月なので冬ほど寒くはないな、薄着ではおそらく耐えられない。
屋上へ出れば地面に下ろしてくれる。
さっきから私の中で海里が『離れろ!』と言ってくるので、拓也と距離をとろうとする。
入り口にいる拓也と反対の方まで歩き出そうとしたとき、また腕を掴まれた。
今度はそのまま引っ張られて、拓也の脚の間に座らせれた。
そしてどこから取り出したのか、先程までは持っていなかったパーカーを広げて私の上にかけた。

「寒いだろうから、これでも掛けていろ」
「ありがとう」

風が直に当たらなくなって、幾分かマシになった。

「なぁ色々と聞いてもいいか?」
「うん」
「それじゃあ今、海里の方はどうなってんだ?」
「海里は今私と同じものを見て、同じことを感じている」

"どういうことだ?"みたいなかおをしている。

「視覚から感情まですべてのことを共有している」
「さっき俺がしたことも見てたってことか?」
「半分正解」

今度ははっきりとした肯定ではない。
私の中にいても、一日中活動できるわけではない。

「その時は休んでいたから、今は『離れろ!』ってずっと言ってる」