入団から半年ほどが過ぎた頃になるとアイリス達も一人前の騎士として任務にあたるようになっていた。
 皇都騎士団は任務にあたる際、必ず二人組のペアを組む。そしてこの日、アイリスはペアのカインと窃盗犯の追跡をしていた。

 道が細くなるにつれて、馬で追うのは難しくなる。
 買い物をしようと多くの市民が行き交う繁華街、間違って市民を馬で傷つけるわけにはいかないので、思うようにスピードが出せないのだ。さらに、左右の商店からせり出した軒先にぶら下がっている商品が、視界を阻む。
 
「くそっ、このまま進んで小道に入るつもりだぞ」

 隣で馬を操るカインが忌ま忌ましげに吐き捨てる。
 通りの遙か先にいる男が細い小道に入ろうとしているのが見えた。

「小道に入られたら追えなくなる。ここで決めます」
「え? 待てよ、ディーン!」