「いい拳をしている」
「話にならないんだけど。お前が異性に興味を持つなんて、ウン十年に一度あるかないかの珍事なのに……」

 カールは呆れたようにため息を吐くと、ゆるゆると首を振る。

「俺はそろそろ戻るよ」
「ああ、またな」

 一通り連絡事項は伝えたとカールが立ち上がる。パタンとドアが閉まると、執務室に静謐が訪れた。