宮殿の執務室に戻ったレオナルドは、ソファーに背もたれにもたれかかったままぶっきらぼうに答える。

「なんで名前ぐらい聞いておかないんだよ! 舞踏会にいたってことは貴族令嬢だろ?」
「だとは思うが、今となってはわからんな」

 はあっと目の前の男がため息をつく。
 アッシュブラウンの髪に青い瞳という甘いマスクのこの男は、皇帝の側近である四天王の一人──国内貴族の統制を取るカールだ。

 ハイランダ帝国では六年ほど前にクーデター未遂があった。そのため、カールは常に国内貴族の動向に目を光らせ、ほんの些細な事でも軍を掌握するレオナルドに情報提供しに来るのだ。

「見た目の特徴を教えてくれれば、調べられるかもしれない」
「金に近い髪の、女だ」
「それじゃあ対象が多すぎる。もっと他に、特徴はないのか?」
「特徴?」

 レオナルドはしばらく考え込む。