「しらん。なんだそのふざけた二つ名は? なら、お前があのハンカチをもらえばいいだろう。あんなちっぽけなもの、掠り傷ひとつで使い物にならなくなる」
「そういことじゃないんですっ! ああ、勿体ない!」

 グレイルが両手を肩の位置まで上げて身もだえる。

「そもそも、団員達のあの体たらくはなんだ? チラチラと令嬢達のほうを気にするなど、集中力が足りていない。気合いを入れ直せ。敵が色仕掛けを仕掛けてきたらどうする」
「そっちに話が飛び火しちゃうんですかっ!」

 グレイルは額に手を当てるとがっくりと項垂れる。

 そう、レオナルドは非常に優秀な軍人であったが、どこまでも色恋沙汰には無頓着で気の利かない朴念仁な男でもあった。

 訓練場の視察をあとにしてその足で執務室に向かっていたレオナルドは、ふとその道中で足を止めた。

「いい天気だな」