「次、ディーン」

 アイリスは名前を呼ばれ、緊張の面持ちで闘剣場の中央に立った。

 剣は一年前までは弟のディーンの練習相手をしていたが、ディーンが体調を崩してからは自分で素振りをするだけだった。ディーンに成り代わることを決めてからは朝から晩まで訓練を積んだが、それでも限界がある。

「始め!」

 試合開始の声が響き、アイリスは即座に身構える。

 相手の騎士はかなりのスピードだったが、ディーンとそこまでは変わらないように感じた。だが、問題は力の差だ。打ち合いになれば女であるアイリスは圧倒的に不利なので、アイリスは剣を受け流しながら後ろに下がった。

「一回も攻撃できないうちに、もうあんなに後ろに追いやられてるぜ」

 嘲笑するようにジェフリーが隣の新人騎士に言うのが聞こえたが、アイリスは無視してその太刀筋だけに集中し、目を凝らした。