エイル家とはコスタ家同様に代々剣で身を立てている名門騎士家系だ。話には聞いたことがある。兄達の活躍を聞く限り、家名の七光りではなく実力も伴っているのだろう。

「そうですか。これからよろしくお願いします」

 できるだけ目立ちたくないアイリスは当たり障りのない返事をして、前を向き直った。「なあ」っと隣に座るカインが声を掛けてくる。

「よくわかんねえんだけど、エイル家って有名なのか?」
「名門騎士家系です」
「ふうん。俺は平民出身だし、田舎者だからよくわかんねえや」

 カインはそう言うと、ハハッと豪快に笑った。


    ◇ ◇ ◇


 アイリス達の相手をしたのは去年入団したばかりの若手団員だった。ただ、流石は実地で経験を積んできただけある。一年しか変わらないにも関わらず、誰一人として敵わない。
 最も接戦したと思われるカインも、惜しいところで腹に剣を受けて負けた。