「うーん、なにかしら? ご本人を診られれば一番いいのだけど……」
「本人は田舎にいるのです」
「お医者様にはかかっているのよね? 今、何か薬は飲んでいるの?」
「はい」
「そう。なら、治療薬ではなくて補助的に体力回復を助けるものなんてどうかしら?」

 薬師の女性はくるりと後ろを向くと薬瓶がたくさん並んだ棚を眺め、そのうちのひとつを棚から取る。
 どうやら聞いたこともない症状だったらしく、残念ながら特効薬は買えなかった。代わりに、体力回復を助ける栄養補助剤を処方された。

「効果がなかったら言ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」

 アイリスは会釈すると、その薬屋を後にする。

 ──親切な人だったな。いいお店を見つけられたかも。

 今さっき受け取った薬入りの紙袋をぎゅっと抱きしめる。騎士寮についたら、無事に着いたという手紙を添えてこれを送ろう。