あっという間に騎士団入団の日はやってきた。

 帝都はコスタ子爵家がある郊外の町からは馬車で二時間かかる距離だ。町外れにある辻馬車乗り場で馬車を降りたアイリスは、地図を頼りに歩き始める。

 コスタ子爵家当主として恥ずかしくないよう、服装は屋敷に残っていたディーンの服の中で上等なものを着てきた。荷物は手に抱えられる最低限度のものしか持っていない。

 ──この前来たときは気が付かなかったけれど、帝都って賑やかなのね。すごい人。

 コスタ領ではまず見なかった人の多さに、アイリスは圧倒される。どこを見ても人が行き交い、そこかしこから威勢のよい客寄せの声が聞こえる。本当に賑やかだ。

 目的の騎士寮へと向かう途中、ふと一軒の店に人が入ってゆくのが目に入った。看板に薬草の絵が彫られているところから判断すると、薬屋のようだ。

「薬屋さん……」

 アイリスはその店を眺める。