あり得ない。
 二十六歳にしてようやく得た可愛い恋人に、恋人らしいことを何もしていないなんて!

「そういえば、婚約するにあたり贈る記念品に、髪飾りが欲しいと言っていたな。女物の髪飾りなどわからないから、まだ選べずにいる」
「それ、俺が協力してやる!」

 こいつに任せておくと、とんでもない物を選んできそうだ。
 ここは長年の友人である自分が協力してやらなければ。

 カールは瞬時にそう判断した。

「俺がいい店をいくつかセレクトして用意させるから、その中から彼女と二人で選ぶといい」
「そうか? わかった」

 レオナルドは特に反対することもなく頷いた。

 正直、どの店に行けばいいか、本人も判断に迷っていたのだろう。
 普段は迅速、かつ大胆に決断を下して軍を率いるレオナルドだが、恋人に贈る髪飾りはそれ以上の難題だったようだ。