──助けに来てくれたのね?

 そう思ったそのとき、今度は「動くな!」という地響きのような別の声がした。

 ──え? こっちの声は──。

 黒い制服姿の騎士が一気に目の前になだれ込む。

「このお方が誰か知っての狼藉だろうな?」

 颯爽と現れたレオナルドは凍てつくような瞳で人相の悪い男を見下ろす。
 剣がヒタリと狼藉者の首筋に当てられれ、鋭く磨き上げられた刃先が日の光を反射して輝く。「ひっ!」という声にならない音が男の口から漏れた。

 一緒にいた皇都騎士団の団員達が次々に男の仲間を捕らえてゆき、それらの騎士の中にはカインもいた。

「ちょっと待ってくれ! 俺はこの姉ちゃんをちょっと脅すだけで金をくれるってそいつが言うから──」
「そうだ。頼まれただけだ」