からかうように笑うカールをレオナルドは忌々しげに睨み付ける。カールは通常の人間であれば縮み上がるようなレオナルドの視線を受けても、どこ吹く風ですまし顔だ。

「コスタ家と言えば、面白い知らせがあるよ。アイリス嬢の元婚約者から、貴族院に婚姻解消の申し立てがきている」
「婚姻解消の申し立て?」
「そう。まあ、十中八九、申し立てが受理されるだろうね」

 カールは手元から一枚の報告書を差し出す。

「アイリス嬢に伝えるのか?」
「そのつもりだが、なぜだ?」
「婚約解消したとはいえ、それまでの何年もの間、婚約者として過ごしてきたんだろう? 相手に多少の愛着はあるのかなと思って」

 眉を寄せて憮然とした表情を浮かべたレオナルドに、カールはフッと笑みを漏らす。
 こちらの反応を見て面白がっていることは明らかだった。