──アイリスも参加するのだろうか?

 ふとそんなことを思う。
 去年の舞踏会で目撃した見事な拳の一撃が脳裏に甦り、無意識に口元が緩む。ドレス姿で男を殴って吹き飛ばす女など初めて見たので、斬新な驚きだった。

「ちなみに、アイリス=コスタも参加する」

 まるでこちらの頭の中を見透かしたかのようなタイミングで、カールは補足する。眉を寄せると、目が合ったカールはニヤリと笑った。

「お前が知りたいかなと思って」
「……。エスコートはいるのか?」
「気になる?」
「まあ、部下だからな……」
「へえ? そういうことにしとこうか。弟のディーンだよ。でも、お前が何千人もいる部下の参加予定とエスコート相手を全部把握しているとは初耳だ」