ハイランダ帝国の宮殿は、内郭と外郭の二重構造になっている。内郭は皇帝の執務室や生活空間、外郭は各省庁の執務エリアや軍の訓練場になっているのだ。

 この日、勤務交代のために住み込みの部屋からリリアナ妃の元へと向かおうとしていたアイリスは、ふと明るい話し声に気付いて立ち止まった。
 声のほうを見ると、庭園のオープンスペースにご令嬢達の姿が見えた。

 ──宮殿に来たご令嬢がお茶をしているのね。

 宮殿の外郭部には、用事があって宮殿を訪れた貴族や普段から勤務している者がちょっとした休憩をとることができるオープンスペースが各所に設けられている。ソファーや椅子、テーブルなどが置かれており、頼めば女官がお茶も用意してくれるのだ。

 アイリスはその四人組のご令嬢達を眺めた。
 年の頃は自分とさほど変わらない位に見える。皆、色とりどりの美しいドレスを着て着飾っていた。