「お前が手を下すまでもなく、この男は重罪だ」
「──閣下は知っておられたのですか?」

 茶色い瞳と視線が絡むと、レオナルドは小さく頷く。

 ──では、今までディーンによかれと思って飲ませ続けてきた叔父様が用意した薬は毒だったってこと? 私は、ディーンに毒を勧めてきたってこと?

 色々な感情が交じり合い、視界がじわりと滲むのを感じた。腕を掴んでいたレオナルドの手から力が抜け、アイリスの腕がするりと抜ける。
 立ち尽くすアイリスと目線を合わせるように、レオナルドは少し屈んだ。

「この男に関しては、お前の手できちんと終わらせろ」
「──はい」

 頬を伝う熱いものを袖口でぐいっと拭うと、アイリスはしっかりと頷く。

「シレック=コスタ。違法薬物の取り引き容疑で連行する」