「きっと、すぐに元気になりますわ! それに私、先日皇都を訪れた際に仕事を見つけたのです」
「仕事だと?」

 シレックは訝しげに眉を寄せる。

「はい。家庭教師ですわ。貴族のお屋敷ではございませんが、よい給金で募集しているのを見かけまして、応募したら採用されたのです。だから、結婚はしばらく無理ですわ」
「なぜ私に断りなく、そんな勝手なことをした?」

 その声から強い怒りを感じて、アイリスは震えそうになる。
 けれど、ここで引き下がるわけにはいかないと思った。自分がしっかりしないと、コスタ子爵家の未来はないと思ったのだ。

「私ももう大人です。自分のことは自分で致しますわ」
「自分のことは自分で? どの口が言うのか。ディーンの看病の手配も、私がしているというのに! アイリスはまずは素直に感謝の気持ちをきちんと伝えられる子にならねばならないね。ご両親も天国で泣いているだろう」
「それは……」

 アイリスは唇を噛みしめ、ぎゅっと手を握り込む。