「リリアナ妃に相談してみろと仰って下さったではありませんか」
「誰と何を話したかなど、いちいち覚えてない」

 レオナルドはぶっきらぼうに言い放つと剣を鞘にしまう。そろそろ、訓練場に他の隊員達も集まり始める時間だ。

 ──噓ばっかり……。

 アイリスが知る限り、レオナルドはどの部下にいつ何を指示したのか、的確に記憶している。いちいち覚えていないなど、大嘘だ。

 レオナルドはいつもそうだ。
 部下を見渡して困っているものにはさり気ない手助けをし、成果はこれでもかと褒める。それでいて、自分は恩着せがましいことは一切言わずに徹底した指導役に回る。

 ──こういうところが、好きなんだよね……。