魔法薬の効き目は覿面(てきめん)だった。カトリーンに相談して処方してもらった魔法薬を送ってから数日後には、驚くほど体調がいいとディーンから手紙が来たのだ。

「そうか、よかったな」

 朝の訓練でそのことを報告すると、レオナルドは表情を和らげた。

「はい。もしかすると、来年には社交界に出てこられるかもしれません」

 手紙には、まるで今までの苦しさが噓のようだと綴られていた。先日は、五分ほどだけれども、一年以上ぶりに剣を握ってみたとも書かれていた。
 思ったよりもディーンの社交界入りは早いかもしれないと、アイリスは期待に胸を膨らませる。

「閣下、ありがとうございます」
「俺は何もしていない」

 首を横に振るレオナルドを見つめ、アイリスは首を傾げた。