頬を膨らませるリリアナに、アイリスは言葉を詰まらせる。

 そして、ぽつりぽつりと事情を話し始めた。
 神妙な面持ちで聞き入っていたリリアナは、花茶に手を伸ばしてそれを一口飲む。

「弟さんを実際に診てみないと治せるかどうかは、なんとも言えないわ。ただ、わたくしは立場上、直接診に行くことが難しいわ」
「はい」

 リリアナ妃は医師ではなく、皇后だ。
 その立場上、滅多なことでは宮殿から出られない。

 更に、リリアナ妃は第一皇女を出産して数ヶ月しか経っておらず、とても大事な体だった。つまり、リリアナ妃がコスタ領に出向くことなど無理であると、アイリスも重々承知している。

「わかっております。一兵卒の痴れ言とお聞き捨てください」

 目を伏せるアイリスを見つめ、リリアナは眉を寄せる。