リリアナは機嫌がよくなったブルーナを抱いたまま、ソファーに座る。

「治療も……」

 アイリスは今の話を聞いて、ふとレオナルドがリリアナにディーンの治療について相談してみろと言っていたことを思い出した。

 アイリスと共に負傷したカインはあの日、利き手を複雑骨折する大怪我を負った。この国の医療技術では二度と剣が握れないと宮廷医師から宣告されたにも拘わらず再び皇都騎士団に復帰できたのは、リリアナ妃のおかげにほかならない。
 皇都騎士団の団員が任務中に大怪我したという話をたまたま──アイリスはレオナルドが意図的に話したと確信しているが──小耳に挟んだリリアナ妃が、直々に治療すると申し出たのだ。
 
 ──今なら、聞けるかしら?

 アイリスは意を決してリリアナを見つめる。