「ディーンのことは、あなただってわかっているでしょ?」
「俺はもっと構ってほしかったんだよ! そんなときに見つけたんだ。エリーナはアイリスとは違って凄く俺に甘えてくれて──」

 そこでようやく、スティーブンの背後にいる少女に目が入った。黒い髪に焦げ茶色の瞳、小動物系を思わせるようなおどおどとした様子のその少女は、同性のアイリスから見ても庇護欲をそそる。

 怯えるようにこちらを見つめる少女を、スティーブンはアイリスから守るように庇う。
 少女は自らの腹部を庇うように、両手を当てていた。

 その瞬間、アイリスは全てを理解した。

「何が『支える自信がない』よ! 不貞を働いただけじゃない! しかも正式な結婚前に子供を作るなんて!」

 こんな男、こっちから願い下げだ。
 勢いに任せて繰り出した右手は、見事に目的の位置に命中した。
 ガシーンと大きな音が闇夜に響く。