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 アイリスの病室を出たレオナルドは、深いため息をつく。

 医務室に連れて行けば、医師や看護師、薬師など多くの者にディーンが女であることが知られることはわかっていた。それでも、あの状況を見れば連れて行かないわけにはいかなかった。
 もしも連れて行かなければ、ディーンはあのまま命を落とす可能性があったからだ。

 ただ、これまでは女であることを知りながらそっと見守っていたが、さすがにこの人数に知れ渡るとレオナルドが口止めしたところで完全にその事実を隠し通すのは無理だ。
 ディーン=コスタは実は姉だったとしてなんらかの処分を下す必要がある。

 アイリスの隣の病室のドアがカチャリと開く。
 ちょうどカインの包帯を巻き終えた宮廷薬師のカトリーンが、部屋から出てきたところだった。

 カトリーンはリリアナ妃と同じ魔法の国の出身で、この国で唯一『魔法薬』と呼ばれる魔法の力を付与した薬を作れる宮廷薬師だ。そして、魔法薬は通常の薬よりも格段に効き目がいい。