「くっ!」

 アイリスは奥歯をぐっと噛みしめて手に力を込めた。
 普段から偉そうな口を利いているだけあり、打ち込まれた剣は想像以上に重い。しかし、重さで言うならば、ペアを組んでいるカインのほうが上のように感じた。
 それに、毎日のようにレオナルドに剣の相手をしてもらっているせいか、その太刀筋はひどく無駄が多いように感じた。

 腕力に差があるため、まともに打ち合っては分が悪い。
 そう判断したアイリスは次々に繰り出される攻撃を受け流しながら後ろに下がる。

 ジェフリーが完全に押している状況に、周囲から双方の応援の歓声が上がった。

「手足も出ずに追い込まれるなんて情けないなっ」

 せせら笑うようにジェフリーがそう言った瞬間、隙が生まれた。