レオナルドがにやっと笑い剣のスピードがにわかに上がって、アイリスは慌ててそれを受け止めた。けれど、それはやはりアイリスが受け止められるギリギリの速さと強さに調整されていた。

 三十分ほど打ち合っただろうか。
 アイリスは息を切らせて額の汗を拭う。一方、涼しげな表情を一切崩さないレオナルドは自分剣を腰の鞘にしまう。カチャンと金属が鳴る音がした。

「昔、お前の父親に俺もこうして稽古をつけて貰った」
「父に?」
「ああ。とても優秀な騎士だった」

 レオナルドはどこか懐かしむように、目を細める。

 近衛騎士団長だった父の剣技を、アイリスは殆ど見たことがない。
 レオナルドはアイリスも含めて、全ての団員にとって憧れの存在だ。父がこの人の稽古をつけたというのは、不思議な感覚がした。