アイリスは事件当日こそ熱を出したが、その熱もすぐに下がって元気になった。
 女だてらに騎士として生活しているので、体力はあるのだ。右腕の傷口もカインに処置してもらったおかげであの後は傷口が開くこともなく、治ってきている。

 カインに傷口の抜糸をしてもらった翌日、アイリスは久しぶりに早朝の訓練場を訪れた。

「いるかしら……」

 恐る恐る入り口から中を覗くと、その人はやはり今日も一人で剣の練習をしていた。すぐにアイリスに気付いたようで、剣を振る手を止めてこちらに近付いてきた。

「暫くぶりだな」
「はい。怪我をしてしまったので暫く剣の練習はお休みしていたのですが、だいぶ治ってきたのでそろそろ再開しようかと」
「怪我?」

 レオナルドが怪訝な顔で首を横に傾げる。