私が後ろから指示を出しながらようやく家に着くと、私はヘルメットを西村さんに渡した。


「今日はありがとうございました。」

「これ俺の連絡先、…まぁ何かあったら呼んで」


彼はそれだけ言い残すとすぐにバイクを走らせていった。



少女漫画みたいな展開だな…



階段を上りながら余りに現実離れした出来事に力が抜けそうになり、ふらふらと手すりを掴む。


鍵を取り出すと部屋に明かりがついているのが分かった。


あー最悪、叔父さんいるじゃん


叔父がいる時は基本的に鍵は開いているため、私は音を立てないように静かにドアを開けた。

そして忍び足で自分の部屋に向かったのだが、叔父の飲み散らかしたビール缶に足があたる。


カラン


しまった と思ったがもう遅い。


「おい、日茉莉、帰ったのか!」


奥から大きな足音をたて、酔っ払った叔父が歩いてくる。

「お、叔父さん。ただいま」


「いいからはやく金だせ」

叔父は私のバイト代をすべてビールとパチンコ代へと変えてしまう。

私は叔父を睨みつけながら財布を取りだした。
逆らったらどうなるか分かっているからだ。

叔父は私の財布をぶんどると中のお札を数え出す。

「あ?なんだその目つきは」

「いたっ」

叔父は私の髪を掴むと寝室へ放り投げた。


「やめてっ、」

「だれがお前を引き取ってあげたと思ってんだよ!」

私の上に馬乗りになり体をおさえつける。


「こんな際どい服着てじじぃの相手してんだろ?俺の相手もしろよ」

「やだっ、やめてってば」

もう何度か叔父にはこういう事をされている。
私は生きるためだとじっと我慢するしかないのだ。

でも、どんなに絶望的な状況でも決して死を選んだりしない。
神に与えられた2回目の人生なのだから
無駄にしちゃいけない。