「ミライちゃんお疲れ様」


閉店後の店で着替えていると先輩の声がして振り返る。


「あ、アカリさん!お疲れ様です」

あ〜今日もお美しい…!


アカリさんはこの店のNo.1
容姿端麗で優しい人柄がみんなに好かれている完璧な人。


「そういえば、ミライちゃんまた触られそうになってたでしょ」

そう言って微笑むアカリさんはやっぱり可愛い。


「見てたんですか?ほんといつも困るんですよね」


私がそう言うとアカリさんは笑った。
そしてしばらく話し込んだ後、

「じゃ、私帰るわ。ミライちゃんも気をつけて帰んなよー」


アカリさんは素早く着替えると手を振って出ていった。


そんなアカリさんを見送ってすぐに私も着替えをすませ、まだ賑わう更衣室を後にした。


「お疲れ様です」

ボーイさんたちに軽く挨拶をして店を出る。

この辺りは風俗街で決して治安が良いとは言えないため、私はいつも早歩きで大通りまで抜ける。



「おねーさんっ。仕事終わり?」


…でた。よくいるヤツ。女なら誰でもいいわけ?

この通りでは女性が1人で歩いていると絶対に声をかけられる。

私は無視を貫いて歩き続けた。


「ねぇー無視しないでよ。奢るからさ。飲みに行かない?」


男は私の腕を掴んだ。


「ちょ、離してください」

突然のことに驚いて私は男を睨みつける。


なに、こんなしつこい奴はじめて…
腕、痛い


「いいじゃんいいじゃん。ね。おねーさん歳いくつ?若いよね」


「離してください!大声出しますよ?」

私は男を再度睨みつけた。
が、男の顔を私の目がとらえた時ゾクリとした。


なにこいつ、やばい


本能的にそう感じて脚がすくんだ。

「大声?出してみてよ。聞きたーい笑」


そう言って男は固まっている私の腕を構わず引っ張って歩き始めた。


「どこ行くんですか、やめて」


必死で振りほどこうとしたが、
男の力の強さに適うはずもなく、全く歯が立たない。


ちょっと本当にこれはヤバイかも…