「お前ら文化祭について考えといたかー?」

LHRが始まり、原田先生が椅子に腰かけながら質問をなげかける。


「あ、そういえば委員長とか決めてなかったなー。誰かやりたい人?」


先生の質問に周りがざわつく。


「はい」

1人の女の子がスっと手をあげた。


確かあの子は…


「お、高橋、やってくれるか。それじゃあと男子は?」


そうだ、高橋優美だ

彼女は1、2年もずっと同じクラスで毎年委員長をしている子だ。


「いないのか?」


なかなか男子の手が挙がらず、みんなやりたくないので下を向いている。そりゃそうなるだろう。


「じゃあ、文化祭実行委員だけ決めるか?」


先生の質問にみんな うんうん と頷いている。


「はいはい!私、実行委員やりたい!」


突然、後ろから威勢のいい声が聞こえて振り向くと、美桜が元気よく手を挙げていた。


美桜の顔を見ると、こちらに目を向けてウインクをしてくる。


イベント全力で楽しむタイプだ、この子


「日茉莉がサブ委員ってことで!ついてくれまーす」


「は?!ちょ、美桜?何言ってんの?」


美桜の予想外の発言に私は驚いて声をあげる。


「いいじゃん!一緒にやろ?」


「え。絶対やだ!」


「いーからいーから!面倒なことは私がやるから!」


目立ちたくない私は全力拒否して軽く美桜を睨んだが、私の気持ちとは裏腹に流れはどんどん進んでいく。


「松原さんやるなら俺もやりたい!」


そう言って手を挙げたのは武島くん。


「私はやらないってば」


そう言った私の小さな声も虚しく、実行委員が決まってしまった。



「じゃ、女子の実行委員は中川と松原。男子の実行委員は、武島と浦田でいいな?」


「はーい」


みんなのまとまった返事が聞こえ、私はがっくしと肩を落とした。


もう一度振り返って美桜を睨んでみると、美桜は舌を出しながらウインクをして見せた。


「きっと、やってみたら楽しいよ」


こそっと美桜は私にそう言った。