「プリント届けに来たんですけど」
私は初めて入るその部屋を見回しながら大量に並べられた小難しい本に顔を顰めた。
「あぁ、そこ置いといて」
彼の指差す方へ私はプリントの束を置くとソファへ座った。
私を呼び出した張本人は書類とにらめっこしている。
「体調はもう平気か?」
しばらくの沈黙を遮ったのは彼だった。
「え? あぁ、大丈夫です。」
「そうか、、、、、。
そういえば、完全に騙されたなー、
松原日茉莉」
彼は書類から目を離さずに言う。
「は、なんのこと?」
「まさか高校生だったとはな」
あぁ、そのことか
私はため息をついた
「別に騙したわけじゃありません。
バイトのこと他の先生に言うならどうぞ」
本当は言われたらかなりまずいのだが、
私は勢い余って口走ってしまった。
後悔をしてももう遅い。
しかし、返っててきたのは予想外の返答だった。
「いや、言うつもりねぇけど」
「へ?」
「そんな面倒なことするわけないだろ俺が」
…何言ってるのこの人
「それでも本当に教師?」
私は呆れたそぶりをみせた。
「言われたら困るのはお前だろ?」
まぁ、そうなんだけど...
明らかに生じた矛盾を指摘され、言葉に詰まる。
「ほら。もう昼休み終わるぞ。早く行け」
彼は立ち上がって私の背を押した。
すると、ちょうど昼休み終了のチャイムが鳴る。
「やば」
私は小走りで教室へ向かった。
