朧月に酔う

「私さー」

遠い目をした彼女が徐ろに続ける。

「結婚するんだよね。」

「…っは!?」

「あっはは、びっくり、した?」

言葉は笑っていても目は笑っていなかった。
ふうっと溜息をつき、彼女はまた遠い目をする。住宅街の灯りは先程よりも少なくなっていた。

「俺とこんなことしていいのかよ」

冷たい空気が僕の鼻腔を強く刺した。

「これが、あんたと関係持っていい理由にならないことは分かってるけど」

自分の望まない相手と、

親を立てるための結婚をすること

視線を虚空へ向けながら、彼女は全て話した。

いつの時代の話だよ、とも思ったが潤いすぎた目でそう吐露する彼女を見たら全て本当らしかった。