朧月に酔う

一通り終わると、彼女はスマホをいじり始めた。

それを確認し、僕はブラックコーヒーの空き缶と、赤色のLARKを片手にベランダに出る。細く淡い月光が瞳孔を刺した。

煙草を咥えて火を付ける。喉の奥を刺すように体内に侵入する煙が、脳と臓器を蝕んでいく。不快感を翻したような快感がいつのまにか癖になってしまっていたようだった。

煙を吸って、吐いてを繰り返す。虚無に浸り、焦点の定まらない視界を住宅街の疎らな明かりが飾る。

後ろの戸が空き珍しく彼女がベランダに来ると「さむっ」と、小さく身震いをして僕に煙草を催促した。

「珍しいな。」

煙草とライターを渡せば、彼女はタバコだけ受け取った。

「火は?」

そう聞けば彼女は何か企んだような顔で笑う。

そして、んっと背伸びして僕の煙草の火を女自らの煙草に移した。

シガーキス。

初めてだった。

なんで、お前なんかと。

その言葉は情けなくも煙にむせた咳と一緒に空気に溶けた。

その横で済ました顔の彼女に、虫唾が走る。

しかしそんな感情に堕ちていく自分が
どうしようもなく、惨めだった。