朧月に酔う

「どうせ分かってんだろ。」

僕が玄関に足を踏み入れたのを合図に始まるのは

友達以上恋人未満の関係。

彼女は愛のない口付けを諦めたように受け入れた。口を離した時に吐息と共に嫌味っぽく

「煙草くさ」

と伏し目がちに洩らした。

「慣れてんだろ」

僕はそう吐き捨て、寝室へと彼女の細い手首を引く。

暗い部屋。

襲ってくる快楽の中に愛はなく、
気持ちの良さを求めるための作業でしかない。
それでもどこかに交じる安心感にお互いが身を任せて、最後まで欲を満たした。