「あなたは……?」

アンが首を傾げると、男性がスッとアンの手を取りその甲に口付ける。突然のことに顔を真っ赤にするアンに対し、男性はニコリと微笑みながら言った。

「申し遅れました。ルーサーと申します」

アンも慌てて自己紹介をする。そしてシャノンが「私はルーサー様の執事をしております」と言い、「そうだったんだ」と微笑んだ。幼い頃とは違い、シャノンは立派な執事の顔をしている。

「それにしても、先ほどの歌声はとても見事なものでした」

シャノンを見つめていたアンは、ルーサーに腕を引かれて強制的に目を合わせられる。美しい青の瞳に見つめられ、アンは胸を高鳴らせる。

「もしよろしければ、俺と一曲踊っていただけませんか?」

そんな目で見つめられて断る女性などいないだろう。アンとルーサーはパーティー会場の中心に移動し、流れるワルツに合わせて踊り始める。ダンスには自信がなかったアンだったが、ルーサーのリードのおかげで楽しんで踊れている。