「うんっ、なんとかなったね。じゃあ、私紅茶の用意してくる」
「うん」

 彼女が準備室にいる間、彼と2人になる。ここで沈黙というのも気まずいものがあるし、だからと言って共通の話題もなく、出来立てのスイートポテトに目を向ける。

 彼と僕はいわゆるライバルで、でも土台は大分違う。彼の方が大分有利だ。 

「まさか男の人が調理部に入ってたなんて、驚きましたよ」
「まあ、姉が無理やり入れたというか……」
「そうだったんですね。……先輩は、あいつのこと好きですか?」
「え?」

 彼の目はぼくをしっかりと捉えている。逸らしたいのに、逸らせない。

 分かってしまったのだろうか、僕の気持ちを。

 ここではなんと答えるのが正解なのだろうか。正々堂々と自分も彼女が好きだと言ってしまった方がいいのではないか。

「紅茶、やっと見つけましたよ~」

 「うん、そうだよ」と言おうとした時、彼女が戻ってきた。

 彼は力のこもった目から、優しい目へと戻る。本当に、彼は彼女のことが好きなんだなと、彼を見ているとひしひしと感じる。

 多分、僕が好きになる何か月も前から彼は彼女に惚れていて、それなら僕の出る幕なんてあるのだろうか。そこに、僕の存在は必要なのだろうか。

「先輩?」
「あ、……ごめん」

 余計なことを考えすぎて、また部活であるということを忘れてしまっていた。