「おう、どうした休日に」
「ごめんね、わざわざ来てもらって」

 那美には黙って、安藤を呼び出した。

 私が出来ることはこれくらいで、那美を傷付けてしまった現実は消せるものではない。

「えっと、そこのカフェ行こうか」

 若者に人気のカフェチェーン店に来る。相変わらず若者が多くて、席はほとんど埋まっている。

 店内には甘ったるい香りが漂っていて、匂いだけでお腹がいっぱいになってしまいそうだった。

「那美と先輩の話なんだけど……」
「うん」

 安藤は全然動揺していない。むしろ、大きく構えているようにさえ見える。

「実は先輩、那美のこと好きなの。でも、先輩が告白したタイミングが那美が安藤に返事をした日で……」

 これを伝えたところで何かが変わるのかは分からないけれど、もし少しでもいい方向に行くならば。 

「そっか……。なんとなく分かってたんだよな。先輩、平川のこと好きなんじゃないかって。でも、それでも平川が側にいてくれるなら、俺はあいつが何かを言ってくるまでこのまま黙っておこうと思ってる」

 やっぱり、感じてたんだ。