その後家に帰った俺達はリビングでテーブルを囲んでいた。

母『翼、どう思う?先生の話。』

『うん。いーよ、アメリカなんて行くお金無いだろ。それに治る保証もない。』

空『私はお兄ちゃんが元気になってくれるなら学校だって行かないでいい!一緒にアメリカ行く!』
空が泣きそうな声で言う。

母『そうよね。私もそう思う。大切な家族だし、翼にはまだ未来がある。だから出来ることはしてあげたい。』
そう言って母さんは通帳を出した。

『え。なんだよ、これ。』

母『これね、二人のためにコツコツためてきたお金なの。将来結婚費用なんかに当てようなって思って。』

『いや、これは…。空の分でもあるんだろ?』

空『お兄ちゃん!いーよ!お兄ちゃんの為なら使って!空は大丈夫だから!』
その後俺は何回も断ろうとしたが、空も母親もそれを望んでいるようだった。
長い話し合いの末、俺達家族はアメリカへ移住する事になった。

その夜、俺は真珠子の事をずっと考えていた。この先俺が真珠子を幸せに出来るのか。体も弱くてアメリカに行く俺なんかより峰のほうが幸せに出来るだろう。真珠子の事が好きだからこそ、俺は真珠子の幸せを願う。
最終的にたどり着いた答えは、この戦いを降りる。と言うことだった。

だから峰に宣戦布告をした。二人が両想いなのも気がついていた。
真珠子が幸せになれるよう、そして最後に目の前でそれを見届けるために俺はこの場をつくったのだ。
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昇降口にたどり着いた瞬間気が抜けたのか涙が溢れてきた。
あんなカッコつけといて本当は凄く悔しいかった。

『真珠子…真珠子。』
俺は少しの間そこで泣き崩れた。

(幸せになれよ。真珠子。)