−放課後−

誰もいなくなった学校は凄く静かだ。
こんな時間にここを歩くのはあの事件以来だ。
長い廊下を歩き一番奥の教室の前まで来た。

『ふぅー。』
私は深呼吸をしてから扉を開けた。

−ガラガラ−

扉を開けると窓際に今野が、真ん中の机らへんに峰君がそれぞれ寄りかかっていた。

峰君『来てくれたんだね。』

『うん。』

今野『ありがとな。』

『うん。』
私は緊張して中々前を向けない。

今野『真珠子。もう気がついていると思うけど。俺ら…。』

峰君『何か、二人で振り回しちゃってごめんな。俺ら必死だった。』
二人とも下を向いている。

『謝らないで下さい。私…こういうの本当に初めてて、上手く対処出来なくて…。』

峰君『そうだよね。これ以上三木さんに負担になるのは嫌だし、決着つけようって。凄く身勝手だけど…。』
峰君がそこまで言うと二人は並ぶように私の前に立つと、
『『付き合ってください。』』
と同時に言った。

が、次の瞬間『と、言いたかったけど…。』
私は思わず顔をあげる。
その言葉を発したのは今野だった。

峰君『は?何いって…。』
峰君も意味がわからないようだ。

今野『わりぃ。真珠子。ここまで言っておいて何だけど、俺この勝負降りるわ。』

峰君『はあ?』

『え?』
私達は混乱している。

今野『実は俺、卒業したら海外に行くんだ。家族で移住するから真珠子の側にいれない。』

峰君『なんだよそれ…。』

今野『気持ちだけは伝えたかった。後はお前達のお祝いもしてやりたかった。真珠子、峰の事好きなんだろ?気がついていたよ。俺は峰には叶わなかった。でも一瞬でも同じ土俵に上がれたから…。それだけで満足だ。峰、真珠子の事たのんだぞ。』
そう言うと峰君の肩をガシッと掴んだ。

更に続けて『んじゃ、後はお二人で。』
今野は手をヒラヒラさせながら教室を出ていった。