人混みを抜けた所で真理亜が、追いついてきた。
真理亜『真珠子!ちょっとまって!』
私は腕を掴まれた。

『どうしよぉ。真理亜〜…。変な所見られちゃったかな。』

真理亜『大丈夫!峰はそんな心が狭い男じゃないよ。それに…。ちょっと嫉妬させといた方がいいのよ男は。』

『えぇ。そんな事…。』
私にはその考えが理解できなかった。
変なことになって嫌われたらと気が気でなかった。

ふと前方を見ると今度は峰君が他校の女子から話しかけられていた。

真理亜『あ…。』

『峰君こそ…。やっぱりモテルんだ。』
物凄く心がきゅーっとなるのが分かった。

(わかってはいたけど…。)

すると今度は又私が他校の男子に話しかけられた。

『あの。良かったら僕と…。』
そこまで言った所で突然腕を掴まれた。
真理亜かと思って見ると私の手を引いて前方を歩いているのは峰くんだった。

『え…!峰君!』

峰君『緩めすぎ。』
私には意味がわからなかった。

『峰君!』
私はちょっと早歩きの峰君に付いていくので精一杯だった。

だいぶ歩き、階段の影の見えない所に連れてこられた。

『峰君…。私。』
気まずさから顔をあげられない。

峰君『真珠子ちゃん。気、緩めすぎ。』
ちょっと息切れをしながら言う。
私は混乱から前を向くことが出来ない。

峰君『真珠子ちゃんモテるって自覚してる?』
目だけ向けると片方の眉を吊り上げ少し怒ってるようにも見える。私は心臓がドキドキして不安が押し寄せてきた。

峰君『でもよかった。』
そう言って峰君が私の頭にポンッと手を置く。

『え…。』
思わず峰君の方を向くと峰君は怒ってるどころか笑顔だった。

峰君『これ…はい。』
そう言って峰君は一枚の紙のようなものを差し出してきた。

『これは?』
私はそれを手に取って聞く。

峰君『待ってるから。』
そう言って峰君は又教室の方へと走って戻っていった。

『ちょ…!』
そう言うと同時に真理亜が駆け寄って来る。

真理亜『え…?何があったの?』
真理亜はキョロキョロしている。

『これ…。渡された…。』

真理亜『又そのパターン?!』
真理亜はハンカチ事件の事を言ってるのだろう。

(一体この紙は何…。待ってるって。)