中庭につくとそこには数人の生徒がベンチで喋ったり、カップルがいちゃついていたりしていた。

真理亜『あー!!財布違うの持ってきちゃった!ごめん真珠子!ちょっと待ってて!』
そう言って真理亜が教室へ走っていった。

(はあー。すっかり秋になってる。)
気がつくと中庭の木々が赤や黄色に染まっていた。
私は取り敢えず目の前のベンチに腰掛ける。その瞬間、秋の風がスーッと私の体を通り抜けて行った。

『おぉ。寒っ。』
意外と夕方のこの時間は肌寒くなってきていた。
私が身震いをしていると、隣に突然ストンッと人が座ってきた。

(え…?)
そう思って右を向くと何故か今野が前だけを向いて座っていた。

『こ…今野?何して…。』
そこまで言うと今野が
『寒くなったな!』
前を向いたまま少々声をハリ気味で言う。

『う…うん。』
私もこの前の事が頭をめぐり前を向き直して答える。

今野『看板…どう?』

『だいぶ進んだかな?』

今野『そうか!ならよかった。』

『今野は買い出し終わったの?』
今野は数人の生徒と買い出し組になった。

今野『おう。今終わって帰ってきたところ。』
『そっか…。お疲れ!』

今野『おう。』
そう言った直後今野が自分の手に持っていたブレザーを私の肩に掛け立ち上がる。

『え?』
私が見上げると、
今野『風邪ひいたら文化祭台無しになるから…。着ておけよ。』

『え…いい』
そこまで言うと、
今野『あと!』
又少々声をハッて来た。

今野『これ…やるよ!』
そう言って私の手にいつも私が飲んでいるミルクコーヒー缶を押し付けてきた。

『あ…お金は…。』

今野『おごり。特別な。』
そう言って目も合わせずにスタスタ教室の方へ歩いて行ってしまった。

『え、ちょっと!』
私の声は届かなかった。

ドアの所で今野と真理亜がすれ違う。
真理亜が今野が早歩きで去っていくのを見てキョトンとしている。

真理亜『え…。何かあったの?てか、そのブレザー…。』真理亜が駆け寄ってきて不思議そうに言う。

『うん。何か貸してくれた。』

真理亜『まぢか。』
そう言って真理亜が目を大きく開いて驚く素振りを見せた。