−今野side−

始業式が終わり今日はみんな早く帰っていった。

俺は誰もいない教室に一人でいた。
外では二年生を中心となった運動部員が頑張っている。

(ハァー。今日は普通にしてようって決めたのに。)
結局目も合わせられなかった。
俺は真珠子の机を指でなぞる。
すると後ろの入り口から人が入ってきた。
後ろの方をみるとそこには峰が立っていた。

『峰…。』

峰『お前…。三木さんの事好きなのか?』
凄く低い声で言った。

『別にそんなんじゃ。』
俺はそっぽを向く。

峰『正直に言えよ。この間のバーベキューから思ってたんだ。何か変だって。』

『思い過ごしだろ。』

峰『お前と三木さんの事を見ていれば分かるよ。言ったんだろ?好きだって。』

『フゥー。』
俺は息を深く吐いた。
『おう。言ったよ。好きだって。俺にチャンスくれって。』
チャンスなんて来るとは思ってないけど。

峰『俺は…。ライバルがいて嬉しい。』

『は?』
意味がわからない。

峰『俺の好きな人はそれだけ魅力的な人って事だから…。』

『はぁ…。』
なんでこんな臭い言葉を言っているのにクールに見えてしまうのか。イケメンマジックだ。

峰『でもだからといって俺は譲るつもりはない。正々堂々と戦ってみせる。』

『戦うって。俺達がいくら戦ったって決めるのは真珠子だろ。』

峰『そうだけど、選んでもらえるように頑張るんだよ。』

『じゃあいいんだな?俺が戦った結果選ばれても。』

峰『それは…。悔しいけど三木さんが選んだなら俺はそれを応援するよ。』

『お人好しだな。お前。』

峰『まあな。』

そこまで言ったところで峰がバッグを持った。

峰『んてことで。お互いに頑張ろうな。』

『お、おう。』
そして教室から一人出ていった。

(敵に頑張ろうなって…。変なやつ。)

窓の外を見ると夕焼けが綺麗に染まってグラウンドを赤く染めていた。
俺は少し前向きになれた気がした。

(頑張ろうな…。)
そして教室を後にした。