巳子さん『は?』
巳子さんは意味がわからない様子だ。
恐らくみんなも分かっていないのかキョトンとしている。

白路君『ここまで説明してくれて有難うございました。』

巳子さん『意味がわかんないんだけど!』

それを聞いてから白路君が携帯を持ち上げた。机の上に上着でカモフラージュして置いてあった様だ。

白路君『俺ね、実は…動画配信やってるんだ。多分みんなも知ってると思うけど…頼チャンネルってやつ。』

皆が一斉に言った。
『うそだろ!あの頼チャンネル?!』

【頼チャンネル】とは最近流行りの動画配信サービスでトップの人気チャンネルだ。
色んな世の中の事にフォーカスを当てている。確かに本人は出て来ないでキャラクターみたいなのが喋っているから配信者が白路君だとは誰も知らなかった。

白路『いつも皆さんありがとう!今ライブ配信してたんだよね、僕。』

巳子さん『うそでしょ!!今の全部…』

白路『ぜーんぶ視られてた♡』
白路君がウインクする。

巳子さん『ありえない…そんなことしたら…』

白路『そうだよね〜都合悪いよね。だって皆のアイドル巳子ちゃんだもんね♡』

巳子さん『今すぐ消しなさい!早く!そうしないと!』

白路君『そうしないと…何?』
白路君がニヤァっと悪い顔をする。

白路君『画面みて、こんなにも沢山のコメント来てるよ。』

私達も画面を見るとそこには、無数のコメントで上から下まで、『最低』『今すぐ謝れ』『クソ女巳子』などで埋め尽くされている。

白路君『謝んなよ。皆が言ってるよ。そうじゃなきゃ明日から学校でどんな目に合うかね…フフフ』

巳子さんが凄く焦っているのがわかる。この世の終わりみたいだ。
汗が吹き出て全身が震えているのがわかる。


巳子さんが地面に土下座をした。
そして
『ごめんなさい…』
そう言って頭を下げた。

白路君『え?それだけ?他には?周りの人を巻き込んでおいてそれだけ?』
そう言って巳子さんを追い込む。

巳子さん『みんなには本当に酷いことして…。本当に、も、も、申し訳ございませんでした…』
そう言って又深々と頭を下げた。

白路君がクルッと私達の方を向いて
『だってさ、どーする?』
そう言ってきた。

『もう、いーよ。』
真理亜『うん…私も火種になるような事したし…。』

峰君『俺は…俺は…許したくなんかない。お前の事。だけど…皆がそう言うならそれでも良い。』
背中が震えている。
峰君『二度と…俺らの前に顔をだすな。』
そう言って出ていってしまった。


私は急いで追いかけようとするが白路君に掴まれた。
振り向くと白路君が首横に振った。

私はそっとしといてやれ。そう言ってるように聞こえたので追いかけるのをやめた。








かなりの強行突破だったがこの怖い連鎖に終止符が打たれた。






(人ってこんなにも…弱いものなんだ…)
今まで自分だけが弱いものだと思っていた。だけど、人は皆何かを抱えていて、それと向き合ったり背を向けたりして生きているんだと知った。

(自分から目を背けちゃいけないんだ。)

私は肩が軽くなるようなそんな感覚だった。