俺と頼は病室を出たところにある椅子に腰かける。
重苦しい空気が流れている中で頼が口を開いた。

頼『数時間前に真利亜ちゃんから電話が来て俺も急いで駆け付けたんだけど。』
俺は黙って頷く。

頼『真利亜ちゃんと今日会う約束したらしくてその途中で事故に・・・。』

『そっか。』

頼『真利亜ちゃん自分を責めてる。自分が会おうなんて言わなければって。』

『それは違うだろ。だって誰が悪いわけでもないし。今は真珠子を信じるしか。』
誰を責める事も出来ないという事が又自分を苦しめているような気がして心が壊れそうだ。いつの間にか物凄い力で自分の手を握りしめていた。

扉が開く音がして真珠子のご両親が出てきた。
俺と頼は椅子から立ち上がり軽く会釈する。

『真珠子の着替えを取りに行ってきます。』
そう言って薄暗い廊下を歩いて行った。

俺は病室に入りベッドの横に腰かける。
ただ息をしている真珠子をみつめ手をぎゅっと握った。
俺のやや後ろで顔をぐしゃぐしゃにした伊藤さんがいる。
後から入って来た頼が少し空気を吸いに行かせるため彼女の手を引いて病室から出る。
その後に続くよう今野も『頼んだぞ。』そう言って出て行った。

誰もいなくなった途端に涙があふれる。
『真珠子・・・。』
俺は声を殺しながら只々願った。

(お願いだから。目を覚まして。)