頼『で、しゅうちゃんはどうしたいの?』

『どうしたいも何も俺は行かない。』

頼『それでいいの?親父さんとは大丈夫なのか?』
こいつはどっちの味方なんだ。

『だって、日本にいなきゃ真珠子とも…。』

頼『そうだねぇ…。真珠子ちゃんは何て言うだろうね。その話。』
よく意味がわからない。そばにいてほしいって言うに決まってる。

『そりゃ、側にいてほしいって言うだろ。』

頼『どうかね。ためしに本人に聞いてみれば?』

『は?!言えるわけ無いじゃん!』

頼『しゅうちゃん。将来の事ちゃんと考えなきゃ。俺は親父に店継げって言われた時嬉しかったな。』

『そりゃ、うちの会社とは…。』
そこまで言いかけ、この先どんな言葉が飛び出してしまうか考え言うのをやめた。

頼『アハハハ。そうだな。しゅうちゃんの家とは大分規模が違うな。』

『そ、そんな事…。』
後悔の波が押し寄せてきた。

頼『分かってるから大丈夫。でも嬉しかった。』

『なんで?だって、勝手に将来決められてるんだぞ?』

頼『まあな。でもこの人の後取りとして認めてもらえたんだって思った。小さな街の八百屋だけどさ、それなりに誇りをもってたし。今まで育ててもらった恩を返せるかなって。』
俺は何も言い返せなかった。
自分の考えが甘く、子供じみた物だったと気がついたからだ。

頼『俺も考えがしっかりしてる訳でもないからさ、自分のこの先の事考えだしたら不安だった。俺はやってみてそれでも駄目だったらそれはその時って考えだからさ。』

『俺はあたり前にこの先大学に行くと思ってたから急に言われて又この人に振り回されてるって思った。だから悔しかった。この人に俺の人生めちゃくちゃにされるって…。』

頼『親父さん、強そうだもんな。権力者だよな。』

『うん。誰も逆らわない。だからあんな顔してられるんだ。』

頼『兎に角!真珠子ちゃんに相談してみなって。それに…。しゅうちゃんの人生はしゅうちゃんにしか決められないんだぞ。』

『俺…。真珠子を幸せに出来る自信が無い。』

頼『またぁ…。そんな事を…。しゅうちゃん!変な事考えるなよ。わかったな?』
念を押すように頼が俺の肩をポンッと叩いた。
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
自分の事をこんなふうに真剣に考えた事が無かった。

(俺は…。人を幸せにできるのか。)