「ん…」
頭の痛みが酷くて、目が覚めた。
ゆっくりと目を開き、まず視界に入ったのは飽きるほどに見てきた天井。
……ではなく、異様な程に真っ白な世界だった。
体を起こして、上と下、右と左を見ても真っ白なのは変わらなくて。
どこが始まりで、どこが終わりなのか全くもって分からない。
「あ、あの…誰かいません、か…?」
そう声をかけても、自分の声が反響するだけで他には何も聞こえてこなかった。
少し怖くなってその場で立ち尽くしていると、不意に、何かが耳に届いた。
えっ、ひ、人の声…?
それに驚いて、ビクッと肩が跳ね上がる。
「記憶を消したいと願ったのは、貴方ですね?」
「わっ…!」
あんなに遠くに聞こえていた声が、耳元ではっきりと聞こえた。
それにまたもや驚いてしまい、その反動で数歩後ろへと下がったつもりが、自分の足に引っかかってしまって尻もちをついてしまった。
「おっと。驚かせてしまいました?」
結構の痛さに涙目になっていると、スっと視界の隅に入った手。
それを辿るようにして目線を上げると、頭の上に輪っかのようなものが浮いている人と目が合った。