「なにしてんの。行くよ」
おかしい、と思った。
こっちまで戻ってきた燈真は、ぼくの手を掴んで再び歩き出した。
どこか不安に思いながら、手を引かれるまま足を動かす。
「言ったでしょ。」
前から射し込む夕日に顔を背けながら歩いていると、隣から冷たいような、でもどこか優しさを含んだ声が降ってきた。
「あんたが消えても、探すからって。見つけてあげるって。」
ツーと、温かいものが頬を伝った。
なんで泣いているのかなんて、全然わからなくて。
涙を拭って顔を上げると、みんなが待っていた。
控えめに燈真の手をそっと握ると、それに応えるようにしてぎゅっと握り返してくれた。
『おいでよ、燈真。』
いつかぼくが、燈真の手を引いて少し無理やりに連れ出したことが脳裏を掠めた。
今度は燈真が、ぼくを少し無理やりに連れ出してくれたのか。
……それも、案外悪くはないなって、そう思った。